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IS-ISのNSAPアドレスとNET(System ID)

目次

IS-ISのNSAPアドレスとNET(System ID)

IS-ISはISOがCLNPのために標準化したプロトコルなので、IPの経路を配る目的だけで使う場合でも ISO方式のアドレスをルータに1つ設定します。このアドレスがNSAP(Network Service Access Point)で、 ルータ自身を指すものをNET(Network Entity Title)と呼びます。

IPアドレスとの最大の違いは、どこに付けるかです。

項目IPアドレスNSAP(NET)
付与する対象インタフェースごと(リンクベース)ノードに1つ(ノードベース)
長さ4バイト固定(IPv4)8〜20バイトの可変長
表記ドット付き10進(192.168.1.24)ドット区切りの16進(49.0001.0010.0100.1001.00)

IS-ISがノードの識別に使うのは、NSAPに含まれるSystem IDです。OSPFのルータIDに当たる値ですが、 IPアドレスとは無関係です。

NSAPアドレスのフォーマット

正式なフォーマットはISO/IEC 8348の附属書A(規定)が2つの部分に分けて定義しています(A.5.1.1)。 参照したのは2002年の第3版(ITU-T X.213と技術的に一致)で、ISO/IEC 10589:2002が規範参照しているのは 1996年の第2版です。

部分名称内容
IDPInitial Domain PartAFI(Authority and Format Identifier)とIDI(Initial Domain Identifier)
DSPDomain Specific PartIDIが指す機関が割り当てる部分。ISO/IEC 8348はDSPをこれ以上分割していません

実務で見る「HO-DSP」「ID」「SEL」はISO/IEC 8348の用語ではなく、GOSIPなどの割り当て方針側の用語です。

ISO/IEC 10589:2002は図4で「IDP・DSP・AFI・IDIは対応を示すために描いただけで、このプロトコルは 明示的には使わない」と注記し、アドレスを3つの部分に分けて扱います(7.1.1)。実務でもこの簡略化 フォーマットで考えます。

フィールド長さ内容
Area ID1〜13バイト(可変)AFIから始まり、System IDの手前まで。このルータが所属するエリアを表す。7.1.2は「IDとSELを除いた上位部分すべて」と定義している
System ID6バイト(Cisco実装)ノードを一意に識別する値。7.1.3.2では1〜8バイトの可変長で、ルーティングドメインごとに1つの長さを選ぶ
NSEL1バイトNSAPセレクタ。NETでは必ず00(表2のアーキテクチャ定数IntradomainRouteingSelector=0)

NSAP全体は最長20バイトです(ISO/IEC 8348 A.5.4)。IPルーティング用途では AFI 1 + エリア 2 + System ID 6 + NSEL 1 の10バイトが一般的です。

本記事で使うNET
49.0001.0010.0100.1001.00
\_____/ \____________/ \/
Area ID    System ID  NSEL

Area IDが3バイト(AFIの49+エリア番号の0001)、System IDが6バイト、NSELが1バイトで、合わせて10バイトです。

AFIと49

Area IDの先頭がAFIで、ISO/IEC 8348のA.5.1.1.1によれば次の4つを示します。

  1. IDIのフォーマット
  2. IDIの値を割り当てる機関
  3. IDIの先頭のゼロが有意かどうか
  4. DSPの表記形式(abstract syntax)

AFIの値の割り当ては同規格の表A.4のとおりです。

IDIフォーマット10進バイナリISO/IEC 646文字各国文字
X.121(公衆データ網)36, 5237, 53——
ISO DCC(国別コード)3839——
F.69(テレックス)40, 5441, 55——
E.163(公衆電話網)42, 5643, 57——
E.164(ISDN)44, 5845, 59——
ISO 6523 ICD(組織コード)4647——
IANA ICP3435——
ITU-T IND7677——
Local48495051

値が2つ並ぶ行は、3番目(先頭のゼロが有意か)のためです。可変長のIDIはバイナリ符号化で最大長まで パディングされるので、パディングのゼロと意味のあるゼロを区別する必要があり、小さいほうを先頭が非ゼロ、 大きいほうを先頭がゼロのときに使います(A.5.2.1.2)。

49はLocalフォーマットでDSPをバイナリ表記する値です。LocalはIDIが無い(null)ので、IDPはAFIだけになり、 49の直後からがDSPです(A.5.2.1.2.9)。Localの最大DSP長はバイナリ表記で19オクテット(表A.5)で、 AFIの1オクテットを足すとちょうど20オクテットです。

「Local = 私用」は規格の言葉ではありません。表A.4の注記が述べているのは「OSIと非OSIのアドレス体系を 共存させるため」です。ただしIDIが無い=一意性を保証する上位機関が無いので、結果として組織の外で 重複しうるアドレスになります。IS-ISはIGPで経路情報がAS外へ出ないため、IPルーティングには49で十分です。

System IDの一意性は「エリア単位」と「ドメイン単位」に分かれる

System IDは6バイトの値で、ISO/IEC 10589:2002の7.1.4が満たすべき要件を3つ挙げています。

規格要件範囲
7.1.4 a)2)エリア内の2つのシステム(ISでもESでも)が同じID値を使ってはならないエリア単位
7.1.4 b)1)レベル2のIS同士は、ルーティングドメイン内で同じID値を持てないドメイン単位
7.1.4 a)3)ドメイン内のすべてのシステムのID長が等しいドメイン単位

a)2)がエリア単位である点が重要です。別のエリアにいるレベル1ルータ同士なら、規格上はSystem IDが 重複していても構いません。レベル1のLSPはエリアの外へ出ないので、どのLSDBの中でも識別子は衝突しません。 ただし運用では、ホスト名の表示や将来のエリア統合で混乱するため、ドメイン全体で一意にします。

Cisco実装のSystem IDは6バイト固定です(IOS XRの設定ガイドも「各ルータは6バイトの16進のSystem IDで 表される」と述べています)。値に決まりはありませんが、ループバックのIPアドレスから機械的に変換する方法が 広く使われています。

ループバックアドレスからSystem IDへの変換
Step 1. 各オクテットを3桁になるようゼロ埋めする
        192.168.1.24  →  192.168.001.024

Step 2. 12桁を4桁ずつ3つに区切る
        192168001024  →  1921.6800.1024

Step 3. Area IDとNSELを付けてNETにする
        49.0001.1921.6800.1024.00

BGPのルータIDやMPLS-TEのルータIDと同じ値から導けるので、show isis databaseのLSPがどのルータのものか すぐに分かります。MACアドレスをそのまま使う流儀もありますが、機器交換で変わるためループバックから導くほうが 運用しやすいです。

NSEL

最後の1バイトがNSEL(NSAPセレクタ)で、ネットワーク層のサービスをどの上位利用者に渡すかを指定します。 NETのNSELは必ず 00。00はノードのネットワークエンティティ自身を指します。 IOS XRは00以外のNETをコマンドの解析時点で拒否します(後半で確認します)。

複数のエリアアドレスとエリアの統合・分割

1台のルータに複数のNETを設定して、エリアを統合したり分割したりできます。ISO/IEC 10589:2002の7.1.5が 「1つのエリアに複数の同義のエリアアドレスを持たせてよい」と認めており、その数の上限は管理パラメータ maximumAreaAddresses(すべてのISが少なくとも3をサポートしなければならない)で決まります。 この値はPDUで交換され、エリア内で一致しているかが検査されます。値がそろっていないと隣接が 確立できなかったり、エリアが分断されたりします。

複数のエリアアドレスの扱いとエリアの統合・分割の手順は、 IS-ISの複数エリアアドレス(マルチホーミング)とエリアの統合・分割で解説しています。

動的ホスト名(TLV 137)

System IDは読みづらいので、IS-ISはホスト名をLSPのTLV 137で広告し、showの表示をホスト名に置き換えます (RFC 5301)。IOS XRでは既定で有効で、対応表は show isis hostnameで見られます。TLVそのものはIS-ISの主要TLVで解説しています。

検証構成

XRd 26.1.1を7台使い、エリアを3つ作ります。System IDはループバックからの変換規則どおりです。

ルータis-typeNETLo0
R1level-149.0001.0010.0100.1001.001.1.1.1/32
R5level-149.0001.0050.0500.5005.005.5.5.5/32
R2level-1-249.0001.0020.0200.2002.002.2.2.2/32
R3level-1-249.0002.0030.0300.3003.003.3.3.3/32
R4level-149.0002.0040.0400.4004.004.4.4.4/32
R6level-149.0002.0060.0600.6006.006.6.6.6/32
R7level-2-only49.0003.0070.0700.7007.007.7.7.7/32

同じエリアにレベル1が2台(R1・R5)、別のエリアにもレベル1が2台(R4・R6)、バックボーンにレベル2が3台 (R2・R3・R7)という形です。前半で述べた一意性の3つの要件を、それぞれ別のSTEPで確かめるための構成です。

検証の全体像

STEP操作確かめること
0初期状態エリア内はレベル1、エリアをまたぐのはレベル2で隣接すること
1R2のArea IDを49.0009へレベル1の隣接だけが落ちること
2R2のArea IDを戻す復旧
3R5のSystem IDをR1と同じに同一エリア内の重複で何が起きるか
4R5を戻す復旧
5R7のSystem IDをR2と同じにドメイン内のレベル2の重複で何が起きるか
6R7を戻す復旧
7R6のSystem IDをR1と同じに別エリアのレベル1同士なら支障が無いこと
8R6を戻す(最終状態)初期状態と同じ

以降の節はSTEP順ではなく、確かめる内容ごとにまとめています。

Area IDが一致しないとレベル1の隣接は張れない

レベル1の隣接はエリアアドレスが1つ以上一致していないと成立せず、レベル2はエリアが違っても成立します。 初期状態のR2とR3にその違いがそのまま出ています。

STEP 0:R2の show isis neighbors
RP/0/RP0/CPU0:R2#show isis neighbors
Sun Sep 27 18:08:39.590 UTC

IS-IS 1 neighbors:
System Id      Interface        SNPA           State Holdtime Type IETF-NSF
R1             Gi0/0/0/0        *PtoP*         Up    28       L1   Capable 
R5             Gi0/0/0/2        *PtoP*         Up    23       L1   Capable 
R3             Gi0/0/0/1        *PtoP*         Up    26       L2   Capable 

Total neighbor count: 3
STEP 0:R3の show isis neighbors
RP/0/RP0/CPU0:R3#show isis neighbors
Sun Sep 27 18:09:04.617 UTC

IS-IS 1 neighbors:
System Id      Interface        SNPA           State Holdtime Type IETF-NSF
R6             Gi0/0/0/2        *PtoP*         Up    26       L1   Capable 
R4             Gi0/0/0/1        *PtoP*         Up    21       L1   Capable 
R2             Gi0/0/0/0        *PtoP*         Up    24       L2   Capable 
R7             Gi0/0/0/3        *PtoP*         Up    27       L2   Capable 

Total neighbor count: 4

R2は同じエリアのR1・R5とL1、エリアの違うR3とL2です。R3も同じで、level-2-onlyのR7とはL2だけです。

R2のArea IDを49.0009へ変えると、R1側のsyslogに理由が出ます。

STEP 1:R1のsyslog(抜粋)
RP/0/RP0/CPU0:Sep 27 18:11:20.558 UTC: isis[1003]: %ROUTING-ISIS-5-ADJCHANGE : ISIS (1): Adjacency to 49.0001.0020.0200.2002 (GigabitEthernet0/0/0/0) (L1) Down, Area addr/level differ 

IIHが運んでいるのはArea address TLV(TLV 1)です。変更の前後で、この値だけが変わります。

R2のIIHのArea address TLV(tshark -V)
    Area address(es) (t=1, l=4)
        Type: 1
        Length: 4
        Area address (3): 49.0001
R2のIIHのArea address TLV(tshark -V)
    Area address(es) (t=1, l=4)
        Type: 1
        Length: 4
        Area address (3): 49.0009
上のtshark出力のパケット(STEP 1 No.5 のIIH)のpcapをダウンロード

同じキャプチャーのNo.2には、R2が元のエリアから自分のレベル1 LSPを取り下げる動きが写っています。

STEP 1 No.2:R2がパージしたレベル1 LSP(tshark -V、抜粋)
ISO 10589 ISIS Link State Protocol Data Unit
    PDU length: 40
    Remaining lifetime: 0
    LSP-ID: 0020.0200.2002.00-00
    Sequence number: 0x00000006
    [Checksum: [missing]]
    [Checksum Status: Not present]
    Type block(0x0b): Partition Repair:0, Attached bits:1, Overload bit:0, IS type:3
        0... .... = Partition Repair: Not supported
        .000 1... = Attachment: 1
            .0.. .... = Error metric: Not set
            ..0. .... = Expense metric: Not set
            ...0 .... = Delay metric: Not set
            0... .... = Default metric: Not set
        .... .0.. = Overload bit: Not set
        .... ..11 = Type of Intermediate System: Level 2 (3)
    Purge Originator ID (t=13, l=7)
        Type: 13
        Length: 7
        Number of System IDs: 1
        System ID: 0020.0200.2002
上のtshark出力のパケット(STEP 1 No.2 のLSP)のpcapをダウンロード

Remaining lifetime: 0のLSPがパージです。ISO/IEC 10589:2002の7.3.16.4は、寿命0のLSPはヘッダーだけを 残して伝搬すると定めています。Purge Originator ID TLV(TLV 13)は規格には無く、 RFC 6232で追加されたものです。

System IDが重複するとどうなるか

各STEPで7台からping(20発)を打った結果です。壊れ方が要件の範囲どおりに分かれます。

STEPR1→R4R1→R6R1→R7R1→R5R4→R1R5→R4R6→R1R7→R2
0(初期状態)100%100%100%100%100%100%100%100%
1(R2のArea ID変更)0%0%0%0%0%0%0%100%
3(同一エリア内の重複)0%0%0%0%0%100%0%100%
5(レベル2の重複)0%0%0%100%0%0%0%0%
7(別エリアのレベル1同士)100%100%100%100%100%100%100%100%

同一エリア内の重複(STEP 3)

R5のSystem IDをR1と同じ0010.0100.1001にすると、両方と隣接しているR2の見え方が壊れます。

STEP 3:R2の show isis neighbors
RP/0/RP0/CPU0:R2#show isis neighbors
Sun Sep 27 18:29:48.357 UTC

IS-IS 1 neighbors:
System Id      Interface        SNPA           State Holdtime Type IETF-NSF
R5             Gi0/0/0/0        *PtoP*         Up    22       L1   Capable 
R5             Gi0/0/0/2        *PtoP*         Up    21       L1   Capable 
R3             Gi0/0/0/1        *PtoP*         Up    21       L2   Capable 

Total neighbor count: 3
STEP 3:R2の show isis database
RP/0/RP0/CPU0:R2#show isis database
Sun Sep 27 18:29:49.297 UTC

IS-IS 1 (Level-1) Link State Database
LSPID                 LSP Seq Num  LSP Checksum  LSP Holdtime/Rcvd  ATT/P/OL
R5.00-00              0x00000008   0x5c03        911  /1200         0/0/0
R2.00-00            * 0x00000004   0xa1ae        909  /*            1/0/0

 Total Level-1 LSP count: 2     Local Level-1 LSP count: 1

IS-IS 1 (Level-2) Link State Database
LSPID                 LSP Seq Num  LSP Checksum  LSP Holdtime/Rcvd  ATT/P/OL
R2.00-00            * 0x0000000c   0xf720        911  /*            0/0/0
R3.00-00              0x0000000e   0xfc50        557  /1199         0/0/0
R7.00-00              0x00000005   0x163b        883  /1200         0/0/0

 Total Level-2 LSP count: 3     Local Level-2 LSP count: 1
STEP 3:R1の show isis database
RP/0/RP0/CPU0:R1#show isis database
Sun Sep 27 18:29:23.808 UTC

IS-IS 1 (Level-1) Link State Database
LSPID                 LSP Seq Num  LSP Checksum  LSP Holdtime/Rcvd  ATT/P/OL
R1.00-00            * 0x00000007   0xdab6        583  /*            0/0/0
R2.00-00              0x00000004   0xa1ae        934  /1200         1/0/0

 Total Level-1 LSP count: 2     Local Level-1 LSP count: 1

R2の隣接表では、2つのインタフェースの相手がどちらも R5 になります。ホスト名はLSPのTLV 137から引くので、 同じSystem IDに対して1つの名前しか持てないためです。レベル1のLSDBにあるのもR5.00-00だけで、 R1のLSPが無くなっています。LSP IDはSystem IDから作られるので、同じIDのLSPは1つしか保持できず、 後から届いたものが前のものを置き換えます。

一方でR1自身のLSDBにはR1.00-00 *があり、R1からは正常に見えています。それでもR1宛の通信は すべて止まります(上の表の0%)。エリアのLSDBからR1のプレフィックスが消えているためで、 壊れているルータ自身では気づけません。

ドメイン内のレベル2の重複(STEP 5)

R7のSystem IDをR2と同じにすると、同じことがレベル2のサブドメインで起きます。R7とR2は隣接しておらず、 両方と隣接しているR3で衝突します。

STEP 5:R3の show isis neighbors
RP/0/RP0/CPU0:R3#show isis neighbors
Sun Sep 27 18:43:42.899 UTC

IS-IS 1 neighbors:
System Id      Interface        SNPA           State Holdtime Type IETF-NSF
R6             Gi0/0/0/2        *PtoP*         Up    29       L1   Capable 
R4             Gi0/0/0/1        *PtoP*         Up    29       L1   Capable 
R7             Gi0/0/0/0        *PtoP*         Up    29       L2   Capable 
R7             Gi0/0/0/3        *PtoP*         Up    27       L2   Capable 

Total neighbor count: 4
STEP 5:R3の show isis database
RP/0/RP0/CPU0:R3#show isis database
Sun Sep 27 18:43:43.937 UTC

IS-IS 1 (Level-1) Link State Database
LSPID                 LSP Seq Num  LSP Checksum  LSP Holdtime/Rcvd  ATT/P/OL
R3.00-00            * 0x0000000b   0x8f7e        824  /*            1/0/0
R4.00-00              0x00000007   0x2aac        792  /1200         0/0/0
R6.00-00              0x00000008   0x126b        789  /1200         0/0/0

 Total Level-1 LSP count: 3     Local Level-1 LSP count: 1

IS-IS 1 (Level-2) Link State Database
LSPID                 LSP Seq Num  LSP Checksum  LSP Holdtime/Rcvd  ATT/P/OL
R7.00-00              0x0000000f   0xf7f9        883  /1200         0/0/0
R3.00-00            * 0x00000010   0xb995        881  /*            0/0/0

 Total Level-2 LSP count: 2     Local Level-2 LSP count: 1

レベル2のLSDBからR2のLSPが消えます。R2はエリア49.0001とバックボーンをつなぐ唯一のルータなので、 エリアをまたぐ通信が全滅します。R1からR5(同じエリア)だけは100%のままで、 壊れる範囲がレベル2のサブドメインに限られていることが分かります。

別エリアのレベル1同士なら支障が無い(STEP 7)

R6(エリア49.0002のレベル1)のSystem IDをR1(エリア49.0001のレベル1)と同じにします。 規格の要件はエリア単位なので、これは違反ではありません。

STEP 7:R2の show isis hostname
RP/0/RP0/CPU0:R2#show isis hostname
Sun Sep 27 18:54:32.990 UTC

IS-IS 1 hostnames
Level  System ID      Dynamic Hostname
 1     0010.0100.1001 R1
 1,2 * 0020.0200.2002 R2
 2     0070.0700.7007 R7
 1     0050.0500.5005 R5
 2     0030.0300.3003 R3
STEP 7:R3の show isis hostname
RP/0/RP0/CPU0:R3#show isis hostname
Sun Sep 27 18:55:00.015 UTC

IS-IS 1 hostnames
Level  System ID      Dynamic Hostname
 1     0010.0100.1001 R6
 2     0020.0200.2002 R2
 2     0070.0700.7007 R7
 1,2 * 0030.0300.3003 R3
 1     0040.0400.4004 R4

同じSystem ID0010.0100.1001が、R2ではR1、R3ではR6に対応しています。レベル1のLSPはエリアの外へ 出ないので、どちらのLSDBでも識別子は衝突しません。疎通も8通りすべて100%のままです。

NSELは00以外を受け付けない

00以外のNSELを持つNETを入れようとすると、IOS XRはコマンドの解析時点で拒否します。

NSELを01にしたNETを設定しようとした場合
RP/0/RP0/CPU0:R1(config-isis)#net 49.0001.0010.0100.1001.01

                                  ^
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RP/0/RP0/CPU0:R1(config-isis)#abort

RP/0/RP0/CPU0:R1#show running-config router isis

Sun Sep 27 18:05:28.787 UTC
router isis 1
 is-type level-1
 net 49.0001.0010.0100.1001.00
 log adjacency changes

キャレット(^)がNSELの位置を指しています。abortで抜けた後のshow running-config router isisが 元のNETのままであることから、候補設定にも入っていないことが分かります。

NETの設定と確認

IOS XRではrouter isis配下のnetコマンドで設定します。

STEP 0:R1の show running-config router isis
RP/0/RP0/CPU0:R1#show running-config router isis
Sun Sep 27 18:08:15.829 UTC
router isis 1
 is-type level-1
 net 49.0001.0010.0100.1001.00
 log adjacency changes
 address-family ipv4 unicast
  metric-style wide
 !
 interface Loopback0
  passive
  address-family ipv4 unicast
  !
 !
 interface GigabitEthernet0/0/0/0
  point-to-point
  address-family ipv4 unicast
  !
 !
!

設定した内容はshow isisで確認できます。

STEP 0:R2の show isis(抜粋)
RP/0/RP0/CPU0:R2#show isis
Sun Sep 27 18:08:38.882 UTC

IS-IS Router: 1
  System Id: 0020.0200.2002 
  Hostname: R2
  IS Levels: level-1-2
  Manual area address(es):
    49.0001
  Routing for area address(es):
    49.0001
  Multi-Instance Id: 0
欄意味
System IdNETから取り出したSystem ID。ここがLSPの識別子になる
IS Levelsこのルータが動作するレベル(is-typeの設定内容)
Manual area address(es)設定したNETのArea ID。複数のNETを設定すると複数行になる
Routing for area address(es)実際にルーティングを行っているエリア。通常は上と一致する

検証Configおよびshow結果

各STEPで7台すべてから取得しています。検証Configはこの..._run.txtです(最終状態はSTEP 8のもの)。

ファイル内容
..._show.txtshow一式。show version / show interface / show route / show route summary / show cef / show isis / show isis hostname / show isis neighbors detail / show isis adjacency-log / show isis database detail / show isis database level 1 / level 2 / show isis topology / show isis route ほか(役割ごとに30〜32コマンド)
..._ping.txtping(20発)とtraceroute
..._clear.txtそのSTEPでクリアしたインタフェースカウンタの記録
..._commit.cfgそのSTEPで実際にcommitされた設定だけ(STEP 0は変更なしのため無し)
..._log.txtそのSTEPの範囲だけに絞ったshow logging
..._run.txtそのSTEP時点のshow running-config(=そのSTEPの検証Config)
..._trace.txtshow isis trace standard | include ADJ(隣接の状態変化)

STEP 0:初期状態

ルータshow出力ping / tracerouteclear投入した設定syslogrunning-configtrace
R1showpingclear—logruntrace
R2show—clear—logruntrace
R3show—clear—logruntrace
R4showpingclear—logruntrace
R5showpingclear—logruntrace
R6showpingclear—logruntrace
R7showpingclear—logruntrace

STEP 1:R2のArea IDを 49.0009 へ変更

ルータshow出力ping / tracerouteclear投入した設定syslogrunning-configtrace
R1showpingclear—logruntrace
R2show—clearcommitlogruntrace
R3show—clear—logruntrace
R4showpingclear—logruntrace
R5showpingclear—logruntrace
R6showpingclear—logruntrace
R7showpingclear—logruntrace

STEP 2:R2のArea IDを 49.0001 へ戻す

ルータshow出力ping / tracerouteclear投入した設定syslogrunning-configtrace
R1showpingclear—logruntrace
R2show—clearcommitlogruntrace
R3show—clear—logruntrace
R4showpingclear—logruntrace
R5showpingclear—logruntrace
R6showpingclear—logruntrace
R7showpingclear—logruntrace

STEP 3:R5のSystem IDをR1と同じにする(同一エリア内の重複)

ルータshow出力ping / tracerouteclear投入した設定syslogrunning-configtrace
R1showpingclear—logruntrace
R2show—clear—logruntrace
R3show—clear—logruntrace
R4showpingclear—logruntrace
R5showpingclearcommitlogruntrace
R6showpingclear—logruntrace
R7showpingclear—logruntrace

STEP 4:R5のSystem IDを戻す

ルータshow出力ping / tracerouteclear投入した設定syslogrunning-configtrace
R1showpingclear—logruntrace
R2show—clear—logruntrace
R3show—clear—logruntrace
R4showpingclear—logruntrace
R5showpingclearcommitlogruntrace
R6showpingclear—logruntrace
R7showpingclear—logruntrace

STEP 5:R7のSystem IDをR2と同じにする(ドメイン内のレベル2の重複)

ルータshow出力ping / tracerouteclear投入した設定syslogrunning-configtrace
R1showpingclear—logruntrace
R2show—clear—logruntrace
R3show—clear—logruntrace
R4showpingclear—logruntrace
R5showpingclear—logruntrace
R6showpingclear—logruntrace
R7showpingclearcommitlogruntrace

STEP 6:R7のSystem IDを戻す

ルータshow出力ping / tracerouteclear投入した設定syslogrunning-configtrace
R1showpingclear—logruntrace
R2show—clear—logruntrace
R3show—clear—logruntrace
R4showpingclear—logruntrace
R5showpingclear—logruntrace
R6showpingclear—logruntrace
R7showpingclearcommitlogruntrace

STEP 7:R6のSystem IDをR1と同じにする(別エリアのレベル1同士)

ルータshow出力ping / tracerouteclear投入した設定syslogrunning-configtrace
R1showpingclear—logruntrace
R2show—clear—logruntrace
R3show—clear—logruntrace
R4showpingclear—logruntrace
R5showpingclear—logruntrace
R6showpingclearcommitlogruntrace
R7showpingclear—logruntrace

STEP 8:R6のSystem IDを戻す(最終状態)

ルータshow出力ping / tracerouteclear投入した設定syslogrunning-configtrace
R1showpingclear—logruntrace
R2show—clear—logruntrace
R3show—clear—logruntrace
R4showpingclear—logruntrace
R5showpingclear—logruntrace
R6showpingclearcommitlogruntrace
R7showpingclear—logruntrace

パケットキャプチャーはSTEPごとに3区間で取得しています。

STEPR1-R2間(レベル1)R2-R3間(レベル2)R3-R7間(レベル2)
0pcappcappcap
1pcappcappcap
2pcappcappcap
3pcappcappcap
4pcappcappcap
5pcappcappcap
6pcappcappcap
7pcappcappcap
8pcappcappcap

参考

標準タイトル概要
ISO/IEC 10589:2002(第2版)Intermediate System to Intermediate System intra-domain routeing information exchange protocolアドレス構造を定義する7.1.1(図4の注記)と7.1.2、System IDとNSELの構造を定める7.1.3.2、一意性の要件を定める7.1.4(a)2)・b)1)・a)3))、複数エリアアドレスとmaximumAreaAddressesを定める7.1.5、LSPのパージを定める7.3.16.4、アーキテクチャ定数の表2。
ISO/IEC 8348:2002(第3版)Information technology — Open Systems Interconnection — Network service definitionNSAPアドレスのフォーマット。附属書A(規定)のA.5.1.1(IDP / DSP)、AFIの割り当てのA.5.2.1.1と表A.4、IDIフォーマットごとのA.5.2.1.2(LocalはA.5.2.1.2.9)、最大長20オクテットのA.5.4、DSPの最大長の表A.5。ITU-T勧告X.213と技術的に一致する版。
RFC 6232Purge Originator Identification TLV for IS-ISパージしたLSPに取り下げ元のSystem IDを載せるTLV 13。
RFC 1195Use of OSI IS-IS for Routing in TCP/IP and Dual EnvironmentsIS-ISでIPの経路を運ぶための拡張(Integrated IS-IS)。
RFC 5301Dynamic Hostname Exchange Mechanism for IS-ISSystem IDにホスト名を対応づけるTLV 137。
RFC 7142Reclassification of RFC 1142 to HistoricRFC 1142はISO 10589のDraft Proposalの再公開で、最終版と大きく異なるため参照してはいけないと述べている。

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