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スタティックルーティング

目次

スタティックルーティング

スタティックルーティング(静的経路制御)とは、管理者がルータに対して宛先ネットワークとネクストホップの対応を手動で設定する経路制御の方式です。ルーティングには、このスタティックルーティングと、ルーティングプロトコルが隣接ルータと経路情報を交換して自動的に経路を学習するダイナミックルーティングの2種類があります。本記事ではスタティックルーティングについて、コマンドの書式や設定時に押さえておくべきポイントを掘り下げて解説します。ルーティングそのものの基本的な仕組みについてはルーティングを参照してください。

Cisco IOS(-XE)では、ip routeコマンドを使ってスタティックルートを設定します。

Router(config)# ip route <宛先ネットワーク> <サブネットマスク> {<ネクストホップIPアドレス> | <送出インターフェース>} [アドミニストレーティブディスタンス]

ネクストホップの指定方法

ip routeコマンドでは、パケットの転送先を「ネクストホップIPアドレス」「送出インターフェース」のいずれか、または両方の組み合わせで指定できます。

ネクストホップIPアドレスを指定する方法

隣接ルータのIPアドレスを直接指定する方法です。イーサネットのようなマルチアクセス回線では、この方式が一般的に用いられます。

Router(config)# ip route 192.168.2.0 255.255.255.0 10.1.2.2

この設定では、宛先ネットワーク192.168.2.0/24宛てのパケットが、ルーティングテーブル上で経由先として10.1.2.2という別の経路(多くの場合は自身の直接接続経路)を再度検索し直す必要があります。これを再帰的ルックアップ(Recursive Lookup)と呼びます。ネクストホップの10.1.2.2へ到達するための経路が見つからない場合、この設定自体が有効にならない点に注意が必要です。

送出インターフェースを指定する方法

自身のどのインターフェースからパケットを送出するかを直接指定する方法です。

Router(config)# ip route 192.168.2.0 255.255.255.0 GigabitEthernet1

ポイントツーポイント回線(シリアル回線など、リンクの反対側に接続機器が1台しか存在しない回線)では、送出インターフェースを指定するだけで転送先が一意に決まるため、この方式でも問題なく動作します。しかし、イーサネットのようなマルチアクセス回線でこの方式を使うと、宛先ホストのMACアドレスをARPで解決する際に、本来の宛先とは異なるすべての通信相手に対してARPリクエストを送出してしまう可能性があり、推奨されません。

両方を指定する方法

ネクストホップIPアドレスと送出インターフェースの両方を指定することもできます。

Router(config)# ip route 192.168.2.0 255.255.255.0 GigabitEthernet1 10.1.2.2

送出インターフェースを明示するため再帰的ルックアップが不要になり、かつマルチアクセス回線でも転送先を一意に特定できるため、多くの環境で推奨される書式です。ルーティングの検証環境で使用しているスタティックルートも、この書式で設定されています。

再帰的ルックアップが発生する設定は、中間に存在する経路の状態変化(対象経路の削除など)に影響を受けやすく、経路の安定性という観点ではやや不利です。可能な限り送出インターフェースを含めた書式で設定することが推奨されます。
同一の宛先に対して複数の経路情報源が存在する場合にどの経路を優先するかは、アドミニストレーティブディスタンス(AD)という値によって決まります。スタティックルートの既定のADは1であり、これを応用したフローティングスタティックルートについてはアドミニストレーティブディスタンス(AD)で解説しています。

デフォルトルート(スタティック)

宛先ネットワークとサブネットマスクの両方を0.0.0.0に指定すると、他のどの経路にも一致しなかったパケットの転送先となるデフォルトルートを、スタティックに設定できます。

Router(config)# ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 10.1.2.1

ルーティングの検証環境では、R2に対してこの形式でデフォルトルートが設定されており、show ip routeの出力でもS*(candidate default)として表示されています。スタブネットワーク(外部への出口が1つしかないネットワーク)など、個々の経路を細かく設定する必要がない構成で特によく利用されます。

実機での設定例

ルーティングと同じ検証環境(R1〜R3、PC1〜PC3)を使用します。

この環境では、各ルータに前述の「ネクストホップIPアドレス+送出インターフェース」を両方指定する書式でスタティックルートが設定されています。

ルータ設定されているスタティックルート
R1ip route 192.168.0.0 255.255.0.0 GigabitEthernet3 10.1.3.3
ip route 192.168.2.0 255.255.255.0 GigabitEthernet2 10.1.2.2
R2ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 GigabitEthernet2 10.1.2.1(デフォルトルート)
R3ip route 192.168.1.0 255.255.255.0 GigabitEthernet2 10.1.3.1
ip route 192.168.2.0 255.255.255.0 GigabitEthernet2 10.1.3.1

各ルータのshow ip route実行結果やshow running-config全文は、ルーティングの記事に掲載しています。R1に設定されている2つのスタティックルートは、ロンゲストマッチの具体例としても取り上げているので、あわせて参照してください。

スタティックルーティングのメリット・デメリット

スタティックルーティングとダイナミックルーティングの比較はルーティングにまとめていますが、スタティックルーティング固有の注意点として、経路の変更や障害時に管理者による手動対応が必要になる点が挙げられます。経路数が少ない小規模なネットワークや、スタブネットワークのように経路がそもそも変化しない構成では、ダイナミックルーティングプロトコルの学習・運用コストをかけずに済むというメリットが大きく上回ります。

参考

RFCタイトル概要
RFC 1812Requirements for IP Version 4 RoutersIPv4ルータの要件を定義。経路選択やアドミニストレーティブディスタンスに相当する概念にも言及。

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