IS-ISのオーバーロードビット
IS-ISのルータは、自分のデータベースが当てにならないと宣言できます。LSPヘッダーにある1ビットを立てるだけで、他のルータはそのルータを通過経路として使わなくなります。ただし宛先としては生きたままで、そのルータにつながっているネットワークには届きます。
この記事では、このビットが何のために作られ、立てると経路計算がどう変わるのかを、ISO/IEC 10589:2002の規定とIOS XRの実機で確認します。
出自は「事故の申告」だった
ISO/IEC 10589:2002(第2版)の7.3.19は、このビットをメモリ不足の話として導入しています。
ネットワークの設定誤りや、ある種の一時的な状況の結果として、受信したLink State PDUを格納するのに十分なメモリ資源が無いことがありうる。これが起きたとき、ISは、自身のLSPデータベースが他のISのものと不整合になった場合に、それらのISがオーバーロードしたISを経由する転送経路に依存しないようにするための手順を踏む必要がある。
そして7.3.19.1が、具体的な動作を定めます。
LSPを格納できないとき、そのLSPは無視され、Waiting状態に入るものとする。…Intermediate systemは、LSP番号0の自身のLSPを、LSP Database Overloadビットを立てて生成しフラッディングする。これによりこのIntermediate systemが、他のIntermediate systemから転送経路として考慮されなくなる。
データベースが欠けたルータが経路計算に参加すると、そのルータだけ違う答えを出してループを作ります。壊れた側から「私を通さないでくれ」と申告するのがこのビットです。
ビットはLSPヘッダーの中にある
9.8は、LSPヘッダーの1バイトを4つに区切っています。
| ビット | 名前 | 意味 |
|---|---|---|
| 8 | P | 分割修復をサポートするか |
| 7〜4 | ATT | 他のエリアにつながっているか(メトリック種別ごとに1ビット) |
| 3 | LSPDBOL | LSPデータベースがオーバーロードしているか |
| 2〜1 | IS Type | レベル1か、レベル1とレベル2か |
LSPDBOL – ビット3 – 値0はLSP Database Overloadが無いことを示し、値1は…を示す。
このバイトはLSPヘッダーの一部なので、ビットはレベルごとに存在します。レベル1とレベル2の両方を持つルータは2種類のLSPを出しており、それぞれが自分のオーバーロードビットを持ちます。片方のレベルだけで通過を止めることもできる、ということです(IOS XRのlevel引数はこれを指定します)。
IOS XRのshow isis databaseは、この並びをATT/P/OLという3桁で表示します。3桁目がこのビットです。ATTビットの詳細はIS-ISのATTビットとレベル1のデフォルトルートで解説しています。
立てると何が起きるか
経路計算での扱いは7.2.8.1が定めています。非対称な扱いである点が重要です。
決定プロセスは、LSP Database Overload表示が設定されたISのLSPからの、Intermediate system隣接へのリンクを使ってはならない。そのような経路は、オーバーロードしたISが完全な経路情報ベースを持たないため、ループを生じうる。決定プロセスは、しかしながら、End system隣接へ届くためのリンクは使うものとする。それらの経路はループしないことが保証されるため。
| リンクの種類 | 扱い | IPでの意味 |
|---|---|---|
| IS(ルータ)への隣接 | 使わない | そのルータを通り抜ける経路が消える |
| End system への隣接 | 使う | そのルータにぶら下がる宛先には届く |
つまり「素通りはさせないが、行き止まりの宛先としては使う」という扱いです。オーバーロードしたルータ自身のループバックや接続ネットワークは、他のルータから引き続き到達できます。
End system隣接が安全なのは、そこで経路が行き止まりになるからです。オーバーロードしたルータに届いたパケットが、そのルータに直結した宛先へ渡されるだけなら、間違ったデータベースに基づいて次の誰かへ転送し直すことがありません。ループはパケットが回り続けることで起きるので、行き止まりなら起きようがない、という理屈です。
オーバーロードしたルータ自身の経路計算は変わりません。 ビットは他のルータの計算に効くもので、立てた本人は普通に全経路を計算します。
事故の申告から、運用の道具へ
いまは意図的に立てる使い方のほうが一般的です。
保守での切り離し。 これから触るルータにビットを立てておけば、そのルータを通っていたトラフィックが先に迂回します。リンクを落とすのと違い、そのルータ宛の管理通信は生きたままです。
起動直後のブラックホール回避。 RFC 3277(IS-IS Transient Blackhole Avoidance)が扱う問題です。再起動したルータはIS-ISの隣接をすぐ張り直しますが、BGPの経路はまだ入っていません。IS-ISが最短経路として選んでしまうと、届いたパケットは捨てられます。
RtrBがBGPテーブルを隣接と同期している間、一時的にLSPのオーバーロードビットを立てておけば、RtrAは動作しているRtrA→RtrC→RtrDの経路を使い続ける。
同RFCは、いつ落とすかを実装に委ねています。
上で述べたようにオーバーロードビットを設定するトリガーは、実装者に委ねられる。トリガーの候補としては、たとえば「起動からN秒後」や「BGPのLoc-RIBにあるBGPプレフィックス数がN」といったものが考えられる。
IOS XRのset-overload-bit on-startupは、この両方を用意しています。秒数を指定する形と、BGPの収束を待つwait-for-bgpです。
立てても消えないもの、消えるもの
ビットを立てても、隣接は落ちません。IIHは流れ続け、LSPの交換も続きます。変わるのは他のルータの経路計算だけです。リンクを落とす切り離しと違い、そのルータへの到達性と管理通信が残るのはこのためです。
一方で、迂回路が無ければ宛先は消えます。7.2.8.1は「使ってはならない」と書いているだけで、代わりを用意してくれるわけではありません。オーバーロードしたルータを通る経路しか無い宛先は、経路表から落ちます。保守で立てるときは、そのルータを通っていたトラフィックに別の道があるかを先に確かめる必要があります。
IOS XRには、この「落ちる範囲」を狭める引数があります。
| 引数 | 意味 |
|---|---|
advertise external |
ビットが立っている間も、他のプロトコルから学んだIPプレフィックスは広告する |
advertise interlevel |
ビットが立っている間も、別のレベルから学んだIPプレフィックスは広告する |
level <1-2> |
片方のレベルだけに効かせる |
再配布した経路や、レベルをまたいで持ってきた経路まで一緒に消えると困る場合に使います。この記事の検証では引数を付けず、素のset-overload-bitで確かめます。
実機での検証
検証環境
4台を単一エリア49.0001のlevel-2-onlyにし、四角形につなぎました。レベルの話を混ぜずにビットの働きだけを見るためです。
| ルータ | Lo0 | リンク |
|---|---|---|
| R1 | 1.1.1.1/32 | Gi0/0/0/0 10.1.2.1(R2へ、metric 10)/ Gi0/0/0/1 10.1.3.1(R3へ、metric 20) |
| R2 | 2.2.2.2/32 | Gi0/0/0/0 10.1.2.2 / Gi0/0/0/1 10.2.4.2(R4へ、metric 10) |
| R3 | 3.3.3.3/32 | Gi0/0/0/0 10.1.3.3 / Gi0/0/0/1 10.3.4.3(R4へ、metric 10) |
| R4 | 4.4.4.4/32 | Gi0/0/0/0 10.2.4.4 / Gi0/0/0/1 10.3.4.4 |
R4から1.1.1.1/32へはR2経由20とR3経由30の2つがあります。R2にビットを立てたとき、この経路と、R2自身の2.2.2.2/32への経路がどうなるかを見ます。
検証のSTEP
| STEP | 操作 | 確かめること |
|---|---|---|
| 0 | 既定 | R4の1.1.1.1/32がR2経由20。全台が0/0/0 |
| 1 | R2にset-overload-bit |
R2が0/0/1になり、1.1.1.1/32がR3経由30へ。2.2.2.2/32はR2経由のまま |
| 2 | R2から外す | STEP 0に戻ること |
| 3 | set-overload-bit on-startup 300を入れてprocess restart isis |
再起動直後に0/0/1になること |
| 4 | 何もせずタイマー満了を待つ | 設定は入ったまま0/0/0に戻ること |
| 5 | すべて元に戻す(最終状態) | STEP 0と一致 |
STEP 3はIS-ISプロセスを再起動するので、隣接が一度落ちます。 これは計画した操作で、他のSTEPでは隣接を落としていません。
STEP 0:全台のビットは0
R4から見たデータベースです。
RP/0/RP0/CPU0:R4#show isis database
Sat Sep 12 08:21:19.605 UTC
IS-IS 1 (Level-2) Link State Database
LSPID LSP Seq Num LSP Checksum LSP Holdtime/Rcvd ATT/P/OL
R1.00-00 0x00000007 0x2361 860 /1200 0/0/0
R2.00-00 0x00000008 0x3238 1066 /1200 0/0/0
R3.00-00 0x00000007 0xbc6d 1101 /1200 0/0/0
R4.00-00 * 0x00000006 0xaf62 973 /* 0/0/0
Total Level-2 LSP count: 4 Local Level-2 LSP count: 1ATT/P/OLの欄が4台とも0/0/0です。この3桁目がオーバーロードビットにあたります。
STEP 1:R2にビットを立てる
R2に1行入れました。実際にcommitされた内容です。
RP/0/RP0/CPU0:R2#show configuration commit changes last 1
Sat Sep 12 08:21:37.379 UTC
!! Building configuration...
!! IOS XR Configuration 26.1.1
router isis 1
set-overload-bit
!
endRP/0/RP0/CPU0:R4#show isis database
Sat Sep 12 08:23:55.774 UTC
IS-IS 1 (Level-2) Link State Database
LSPID LSP Seq Num LSP Checksum LSP Holdtime/Rcvd ATT/P/OL
R1.00-00 0x00000007 0x2361 704 /1200 0/0/0
R2.00-00 0x00000009 0x3431 1062 /1200 0/0/1
R3.00-00 0x00000007 0xbc6d 945 /1200 0/0/0
R4.00-00 * 0x00000006 0xaf62 817 /* 0/0/0
Total Level-2 LSP count: 4 Local Level-2 LSP count: 1R2の行だけが0/0/1に変わりました。 R2が自分のLSPを作り直し(シーケンス番号が0x00000009に上がっています)、フラッディングで全台に届いています。
経路がどうなったかを見ます。まずR2を通り抜ける宛先です。
RP/0/RP0/CPU0:R4#show route 1.1.1.1
Sat Sep 12 08:23:54.996 UTC
Routing entry for 1.1.1.1/32
Known via "isis 1", distance 115, metric 30, type level-2
Installed Sep 12 08:21:38.922 for 00:02:16
Routing Descriptor Blocks
10.3.4.3, from 1.1.1.1, via GigabitEthernet0/0/0/1
Route metric is 30
No advertising protos. メトリック30、次ホップは10.3.4.3(R3)です。STEP 0では20でR2経由でしたから、遠いほうの経路に移りました。R2を通る経路が計算から外れたためです。
次にR2自身の宛先です。
RP/0/RP0/CPU0:R4#show route 2.2.2.2
Sat Sep 12 08:23:55.134 UTC
Routing entry for 2.2.2.2/32
Known via "isis 1", distance 115, metric 10, type level-2
Installed Sep 12 08:05:49.223 for 00:18:05
Routing Descriptor Blocks
10.2.4.2, from 2.2.2.2, via GigabitEthernet0/0/0/0
Route metric is 10
No advertising protos. こちらはメトリック10、次ホップは10.2.4.2(R2)のままです。7.2.8.1が「End system隣接へ届くためのリンクは使う」と定めているとおりで、R2は宛先としては生きています。保守で切り離してもR2への管理通信が残るのは、この扱いのおかげです。
LSPの中身も見ておきます。
R2.00-00 0x00000009 0x3431 1062 /1200 0/0/1
Area Address: 49.0001
LSP MTU: 1492
NLPID: 0xcc
IP Address: 2.2.2.2
Hostname: R2
Metric: 10 IS-Extended R1.00
Metric: 10 IS-Extended R4.00
Metric: 0 IP-Extended 2.2.2.2/32
Metric: 10 IP-Extended 10.1.2.0/24
Metric: 10 IP-Extended 10.2.4.0/24リンクもプレフィックスも、何ひとつ消えていません。 R2は「R1へのリンクがある」「R4へのリンクがある」と言い続けています。変わったのは1行目の0/0/1だけで、受け取った側がそのリンクを使わないと決めているのです。ビットは広告の内容を削るのではなく、読み手の扱いを変えます。
パケットで見る
R1 — R2のキャプチャーのNo.32が、ビットを立てた直後にR2が送ったLSPです。tsharkはこの1バイトを規格どおりに展開します。
ISO 10589 ISIS Link State Protocol Data Unit
PDU length: 113
Remaining lifetime: 1200
LSP-ID: 0020.0200.2002.00-00
Sequence number: 0x00000009
Checksum: 0x3431 [correct]
[Checksum Status: Good]
Type block(0x07): Partition Repair:0, Attached bits:0, Overload bit:1, IS type:3
0... .... = Partition Repair: Not supported
.000 0... = Attachment: 0
.0.. .... = Error metric: Not set
..0. .... = Expense metric: Not set
...0 .... = Delay metric: Not set
0... .... = Default metric: Not set
.... .1.. = Overload bit: Set
.... ..11 = Type of Intermediate System: Level 2 (3)Type block(0x07)の内訳が、そのまま9.8の並びです。0... ....がP、.000 0...がATT(メトリック種別ごとの4ビット)、.... .1..がオーバーロードビット、.... ..11がIS Typeです。show isis databaseの0/0/1という3桁は、この1バイトを3つに丸めた表示だったことが分かります。
受け取った側は何をしたか
R4のSPFログです。
RP/0/RP0/CPU0:R4#show isis spf-log
Sat Sep 12 08:23:56.835 UTC
IS-IS 1 Level 2 IPv4 Unicast Route Calculation Log
Capacity: 210, Size: 8
Time Total Trig.
Timestamp Type (ms) Nodes Count First Trigger LSP Triggers
------------ ----- ----- ----- ----- -------------------- ----------------------
--- Sat Sep 12 2026 ---
08:05:29.972 FSPF 0 0 2 CONFIG
08:05:40.778 FSPF 0 1 7 R4.00-00 CONFIG NEWNODE NEWLSP OVLSET PREFIXGOOD AREAADDR IPADDR
08:05:42.935 FSPF 0 1 1 R4.00-00 OVLCLR
08:05:44.421 PRC 0 1 1 R4.00-00 PREFIXGOOD
08:05:46.021 FSPF 0 4 19 R1.00-00 NEWNODE NEWLSP LINKGOOD PREFIXGOOD AREAADDR IPADDR
08:05:49.223 FSPF 3 4 2 R2.00-00 LINKGOOD
08:20:49.277 FSPF 0 4 1 PERIODIC
08:21:38.921 FSPF 2 4 1 R2.00-00 OVLSET最終行のOVLSETが、R2のLSPでビットが立ったことを指すトリガーです。R4はこれを受けてSPFを回し直し(4ノード、2ミリ秒)、経路を入れ替えました。ビットの変化は、リンクが増えたり減ったりしたときと同じように、経路計算のやり直しを引き起こします。
起動直後の行にもOVLSETとOVLCLRが並んでいます。08:05:40に自分(R4.00-00)のビットが立ち、2秒後の08:05:42に落ちています。この実装は、起動の途中で自分でも一瞬このビットを立てています。
STEP 2:外すと戻る
no set-overload-bitで外しました。
RP/0/RP0/CPU0:R4#show isis database
Sat Sep 12 08:26:38.997 UTC
IS-IS 1 (Level-2) Link State Database
LSPID LSP Seq Num LSP Checksum LSP Holdtime/Rcvd ATT/P/OL
R1.00-00 0x00000007 0x2361 541 /1200 0/0/0
R2.00-00 0x0000000a 0x2e3a 1057 /1200 0/0/0
R3.00-00 0x00000007 0xbc6d 782 /1200 0/0/0
R4.00-00 * 0x00000006 0xaf62 654 /* 0/0/0
Total Level-2 LSP count: 4 Local Level-2 LSP count: 1R2の行が0/0/0に戻り、シーケンス番号が0x0000000aに上がっています。R4の1.1.1.1/32もR2経由20に戻りました。ビットの上げ下げはいつでもでき、LSPを1つ作り直すだけで済みます。
STEP 3:起動直後だけ立てる
set-overload-bit on-startup 300を入れてから、IS-ISプロセスを再起動しました。
RP/0/RP0/CPU0:R2#show configuration commit changes last 1
Sat Sep 12 08:26:57.353 UTC
!! Building configuration...
!! IOS XR Configuration 26.1.1
router isis 1
set-overload-bit on-startup 300
!
end再起動の記録です。
RP/0/RP0/CPU0:Sep 12 08:27:01.011 UTC: sysmgr_control[66082]: %OS-SYSMGR-4-PROC_RESTART_NAME : User cisco (vty0) requested a restart of process isis at 0/RP0/CPU0
RP/0/RP0/CPU0:Sep 12 08:27:01.856 UTC: ssh_syslog_proxy[1188]: %SECURITY-SSHD_SYSLOG_PRX-6-INFO_GENERAL : sshd[8692]: Received disconnect from 10.100.3.1 port 54833:11: disconnected by user
RP/0/RP0/CPU0:Sep 12 08:27:01.856 UTC: ssh_syslog_proxy[1188]: %SECURITY-SSHD_SYSLOG_PRX-6-INFO_GENERAL : sshd[8692]: Disconnected from user cisco 10.100.3.1 port 54833
RP/0/RP0/CPU0:Sep 12 08:27:02.348 UTC: isis[1003]: %ROUTING-ISIS-5-PM_HA_ROLE_CHG : ISIS (1): ISIS HA role change: Active
RP/0/RP0/CPU0:Sep 12 08:27:02.348 UTC: isis[1003]: %ROUTING-ISIS-5-PM_ISSU_ROLE_CHG : ISIS (1): ISIS ISSU role change: Primary
RP/0/RP0/CPU0:Sep 12 08:27:02.990 UTC: isis[1003]: %ROUTING-ISIS-6-INFO_STARTUP_START : ISIS (1): Cold controlled start beginning
RP/0/RP0/CPU0:Sep 12 08:27:04.356 UTC: isis[1003]: %ROUTING-ISIS-5-ADJCHANGE : ISIS (1): Adjacency to 49.0001.0040.0400.4004 (GigabitEthernet0/0/0/1) (L2) Up, New adjacency
RP/0/RP0/CPU0:Sep 12 08:27:04.361 UTC: isis[1003]: %ROUTING-ISIS-5-ADJCHANGE : ISIS (1): Adjacency to 49.0001.0010.0100.1001 (GigabitEthernet0/0/0/0) (L2) Up, New adjacency
RP/0/RP0/CPU0:Sep 12 08:27:13.095 UTC: isis[1003]: %ROUTING-ISIS-6-INFO_STARTUP_FINISH : ISIS (1): Cold controlled start completed プロセスが上がり直し、1秒ほどで隣接が復活しています。この時点のデータベースです。
RP/0/RP0/CPU0:R4#show isis database
Sat Sep 12 08:29:11.749 UTC
IS-IS 1 (Level-2) Link State Database
LSPID LSP Seq Num LSP Checksum LSP Holdtime/Rcvd ATT/P/OL
R1.00-00 0x00000009 0x1f63 1076 /1200 0/0/0
R2.00-00 0x0000000b 0x3033 1073 /1200 0/0/1
R3.00-00 0x00000007 0xbc6d 629 /1200 0/0/0
R4.00-00 * 0x00000008 0xab64 1076 /* 0/0/0
Total Level-2 LSP count: 4 Local Level-2 LSP count: 1R2が0/0/1で戻ってきました。 設定に書いた300秒のあいだ、R2は「通さないでくれ」と言い続けます。R4の1.1.1.1/32はこの間R3経由30のままです。
STEP 4:タイマーが落ちる
設定は何も変えずに300秒を待ちました。
RP/0/RP0/CPU0:R4#show isis database
Sat Sep 12 08:34:00.884 UTC
IS-IS 1 (Level-2) Link State Database
LSPID LSP Seq Num LSP Checksum LSP Holdtime/Rcvd ATT/P/OL
R1.00-00 0x00000009 0x1f63 786 /1200 0/0/0
R2.00-00 0x0000000c 0x2a3c 1084 /1200 0/0/0
R3.00-00 0x00000008 0xba6e 1081 /1200 0/0/0
R4.00-00 * 0x00000008 0xab64 786 /* 0/0/0
Total Level-2 LSP count: 4 Local Level-2 LSP count: 10/0/1が0/0/0に戻っています。 set-overload-bit on-startup 300の設定は入ったままです。R2は自分でビットを落としてLSPを作り直しました(シーケンス番号が上がっています)。
キャプチャーにもその瞬間が入っています。
ISO 10589 ISIS Link State Protocol Data Unit
PDU length: 113
Remaining lifetime: 1200
LSP-ID: 0020.0200.2002.00-00
Sequence number: 0x0000000c
Checksum: 0x2a3c [correct]
[Checksum Status: Good]
Type block(0x03): Partition Repair:0, Attached bits:0, Overload bit:0, IS type:3
0... .... = Partition Repair: Not supported
.000 0... = Attachment: 0
.0.. .... = Error metric: Not set
..0. .... = Expense metric: Not set
...0 .... = Delay metric: Not set
0... .... = Default metric: Not set
.... .0.. = Overload bit: Not set
.... ..11 = Type of Intermediate System: Level 2 (3)同じR2のLSPで、Type blockが0x07から0x03に変わり、.... .0.. = Overload bit: Not setになりました。R4の1.1.1.1/32もR2経由20に戻ります。
STEP 5:元に戻す
no set-overload-bit on-startup 300で設定を外しました。4台のrunning-configはSTEP 0と一致しています。
検証Configおよびshow結果
R1 — R2のリンクで試験の全体をキャプチャーしています。上で引用したLSPはこの中のNo.32とNo.201です。
試験全体のキャプチャー(R1 — R2、約18分)をダウンロード各STEPで4台すべてから、次の3種類をルータごとに分けて取得しています。検証Configはこの..._run.txtです(最終状態は最後のSTEPのもの)。設定を変えたSTEPには、そのSTEPでcommitされた内容だけを収めた..._commit.cfgも付けています。
| ファイル | 内容 |
|---|---|
..._show.txt |
show version / show interface description / show route と、show isis 系一式(interface brief / neighbors / database detail / topology / route / adjacency-log / spf-log / lsp-log / statistics)、show route 1.1.1.1 / show route 2.2.2.2 |
..._log.txt |
そのSTEPの範囲だけに絞ったshow logging。各STEPの開始時にlogmsgでマーカーを入れ、その時刻をshow logging startに指定して取得したもの |
..._run.txt |
そのSTEP時点のshow running-config(=そのSTEPの検証Config) |
..._commit.cfg |
そのSTEPでcommitされた設定(show configuration commit changes last 1)。設定を変えていないSTEPには無い |
STEP 0:初期状態(オーバーロードなし)
| ルータ | show出力 | syslog | running-config | commit |
|---|---|---|---|---|
| R1 | show | log | run | - |
| R2 | show | log | run | - |
| R3 | show | log | run | - |
| R4 | show | log | run | - |
STEP 1:R2にset-overload-bit
| ルータ | show出力 | syslog | running-config | commit |
|---|---|---|---|---|
| R1 | show | log | run | - |
| R2 | show | log | run | commit |
| R3 | show | log | run | - |
| R4 | show | log | run | - |
STEP 2:R2から外す
| ルータ | show出力 | syslog | running-config | commit |
|---|---|---|---|---|
| R1 | show | log | run | - |
| R2 | show | log | run | commit |
| R3 | show | log | run | - |
| R4 | show | log | run | - |
STEP 3:set-overload-bit on-startup 300を入れてprocess restart isis
| ルータ | show出力 | syslog | running-config | commit |
|---|---|---|---|---|
| R1 | show | log | run | - |
| R2 | show | log | run | commit |
| R3 | show | log | run | - |
| R4 | show | log | run | - |
STEP 4:タイマー満了を待つ(設定変更なし)
| ルータ | show出力 | syslog | running-config | commit |
|---|---|---|---|---|
| R1 | show | log | run | - |
| R2 | show | log | run | - |
| R3 | show | log | run | - |
| R4 | show | log | run | - |
STEP 5:すべて元に戻す(最終状態)
| ルータ | show出力 | syslog | running-config | commit |
|---|---|---|---|---|
| R1 | show | log | run | - |
| R2 | show | log | run | commit |
| R3 | show | log | run | - |
| R4 | show | log | run | - |
参考
| 標準 | タイトル | 概要 |
|---|---|---|
| ISO/IEC 10589:2002(第2版) | Intermediate System to Intermediate System intra-domain routeing information exchange protocol | IS-IS本体の仕様。本記事が参照したのは、オーバーロードしたISを経由する経路計算を定める7.2.8.1、ビットの出自であるメモリ不足とWaiting状態の7.3.19 / 7.3.19.1、LSPヘッダーのビット配置を定める9.8。 |
| RFC 3277 | Intermediate System to Intermediate System (IS-IS) Transient Blackhole Avoidance | 再起動直後のルータがBGPの経路を持たないままIS-ISの最短経路に選ばれ、パケットが捨てられる問題。一時的にオーバーロードビットを立てて回避する方法を示している(Informational、2002年4月)。 |
| RFC 1195 | Use of OSI IS-IS for Routing in TCP/IP and Dual Environments | IPの経路をIS-ISで運ぶための拡張。 |
| Cisco ASR 9000 Routing Command Reference | IS-IS Commands | IOS XRのset-overload-bitコマンド。advertise / level / on-startup の引数を持つ。 |
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